台地と谷間の街

 観光に来ただけでは気づかないが、鹿児島で生活してみて困ったことの一つが、郊外の道路が判りにくいこと。中心部は、まあ、まとまっているのだが、ちょっと離れると、行き止まりの道があってとても判りにくい。
 ご存じのとおり、鹿児島はシラス台地が広がっていて、中心街は海岸の狭い平地(三角州というよりも海岸扇状地というべきもの)にある。街が発展する上で、最初は台地を刻む谷に張り付きながら拡大して行ったが、1970年代以降は、台地の上にニュータウンを造った。私の目には、まともな都市計画があったとは思えないような広がり方。絵に描いたようなスプロール(虫食い状の乱開発)。台地上の団地も新しいものは計画的だと思えるが、ちょっと古いものは開発の単位が小さく、やたらに行き止まりがあったり、台地縁ギリギリまで家が建てられていたりする。
さらに古い時代の開発では、台地を刻む谷にそって数戸〜十数戸程度づつ開発されたらしく、道は狭く崖下ギリギリまで行き止まりの道に沿って家がある。古い時代の開発であることを物語って、こういう場所はインフラも乏しくガスが来ていない。やたらプロパンガスのボンベが目立つ。山の手と下町という言葉の本来の意味とは違うが、結果的には崖下の街は家も古くぎっしりと建て込んでいる上に道も悪く、山の手と下町の対比が出来上がっている。
 シラス台地とは二万数千年前に姶良カルデラ(鹿児島湾北部)が破局的大噴火をおこし、その時に噴出した火砕流が、当時の地形の起伏を埋め立てたもの。このため、台地面は平坦だが、二万年以上の時を経て、谷が台地を刻んでいる。姶良の火砕流は未固結だが、火山灰はそのそもそもの性質として、急崖を作りがち。台地面は緩やかなのにその縁は切り立って垂直に近い急崖となっている。上に、未固結なので大雨の度に崩れる。雨が多い地方のはずなのに、毎年のように大雨で崖崩れの事故が起きている。が、こんな状況じゃ当然。


台地の上には住宅街が広がる。ホント平坦に見えるでしょ?


が、その縁には緑地帯もなくコンクリートで固められた崖があったりする。最初はダムの堤上に家が建ってるのかと思った。


台地を刻む谷に家が張り付いている


谷間の街が古いことは明らか。なんとこれが現役!


いくらコンクリートで固めてもどんどん崩れる。「崖崩れが発生する危険がありますので十分注意」ったって、どうにもならない。崩壊した崖の上に人家が見える。


未固結の火砕流堆積物は自然な状態だと、谷壁はしばしば垂直な崖になる。この崖の上にも街がある。


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