くじらの町、太地

和歌山県の南端に太地町という小さな町がある。面積から言っても人口からも「小さい町」としか言いようがないのだが、一部の者の間ではとっても有名。

イルカ漁の様子を隠し撮りしたCOVEなる映画が2009年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門賞を受賞し、その上映を巡って日本でも騒ぎになった。その舞台が太地町。

イルカ漁(鯨漁:イルカも鯨も種は同じ。小型クジラをイルカと呼ぶだけのこと)の解禁は9月から。なので見に行きました。


この小さな半島の一部が太地町の全て。JR太地駅も太地町の外にある。周辺の町村は那智勝浦と合併したのだが、太地町は合併を拒んでいる。ので、この半島の周囲はすべて那智勝浦になる。その那智勝浦町も単独ではやっていけないので、新宮市との合併を選んだのだが。


街中にクジラやイルカをモチーフにしたものがたくさん


かつての捕鯨船も展示されていた。有料なので見なかったけど。

血に染まる?COVE( 入り江)は、実は太地町クジラ浜海水浴場。私が訪れた9月中旬ともなれば泳いでいる人も居ない。と思ったら1組いた。シーシェパード関係者か?とにかく静か、晴れた日の休日に浜辺でのんびり本を読んで過ごす。水はものすごくキレイだし波も穏やか。ホント、のどかな光景でした。


イルカを追い込むのは海水浴場そのものじゃなく、その脇の小さな入り江なんだけどね。写真に見えるトイレ・シャワー室の向こう側、正面右奥のかげあたりに追い込むらしい。


11時ころから、浜の日陰でのんびり本を読んでいると1時頃に外国人が4名やってきた。騒がしいやつら。あちこちで写真とったり海で泳いだり。典型的なアメリカ人だな。ビデオカメラをもって泳いでいる。イルカを撮影したいらしい。


隠すこともなく背中には堂々、シーシェパードクルーと大書きされたTシャツを着ている。南氷洋で日本の調査捕鯨船に薬剤を投げて調査員に怪我をさせたり、体当たりして船を壊したりする、あのドクロマークを掲げたシーシェパードのメンバーか?
公安当局らしき5名が2台の車に乗って彼らの動きを監視していた。


そのうち、右翼なのか、スピーカーを積んだ車がやってきて、カタカナ英語でマイクでがなりたて始めた。と、言っても、ここでは日常茶飯事らしく、4人はこの車の前で記念写真を撮っていたんだが。静かな入り江だったのに......。15時前には右翼も外国人らも居なくなり、もとの静かな海に戻った。


近くの草むらにはシカがいました。逃げることもない。シカのステーキは米国人の大好物なんだそうな。以前、北海道富良野のクマゲラという食堂でシカ肉を食べたことがある。そんなに美味しいものだとは思わなかったけど。野生のシカを食べるのは問題ないが、野生のクジラやイルカを殺すなんて野蛮人のすることらしい。彼らによれば。


以前に苦戦した熊野古道の大雲取越は正面の稜線を越える。左に小さく見えるのは那智勝浦の中心街。


かつてはここでクジラを見張っていたらしい。岬には江戸前期から灯台があって紀州藩士が2名常駐していたそうな。



遣唐使も帰路にここに漂着したとのこと


現在の灯台。明治33年だそうな。


縮小しすぎたので説明が読めないけど。


バカチョンカメラじゃよく写せない。が、沖合にはたくさんの貨物船が居ました。やはり今でも交通の要衝らしい。


ママこ投げ。どんな伝説があるのか知らないが、海に面した崖の上(海岸段丘)です。


このあたりは地殻変動の激しい日本の中でも、とくに海岸段丘が発達している所。対岸の稜線もほぼ平ら。これが海岸段丘です。正面の銀色に輝くのは海上保安庁の天体観測ドーム。昨年秋の一般公開の際に見に行ったのですが、残念ながら写真は残してません。

南海地震によって海底が隆起する。と、以前の海底は波に削られてほぼ平らになっている(波食台)。のが、海面上に姿を表す。もっとも、毎回の南海地震毎にこんな隆起が起きるのではないらしい。南海地震の間隔は百数十年。だが、このような大規模隆起は数千年に一度のこと。たぶん副断層が活動するとこういった海岸の局所的隆起が生じるんじゃないかと思う。



上の写真のすぐ近く。ここでは隆起はあまり起きていないらしく、波食台は無い。ここでは海面下5m位の海底は上の写真のようにほぼ平坦な岩場になっているはず。
その隆起が積み重なると、遠くの稜線のような平坦な地形:階段段丘となる。


海岸段丘はかつて海面近く(海面下5-10m位)で波によって平らに削られた海底面。それが積み重なる地震によって隆起して高度100m以上になる台地になっている。
よく見ると段丘面にはいくつか不連続がある。氷河時代の海面変動(亜氷期)の痕跡。たぶん、写真の左端の部分が約12万年前の間氷期(ウルム氷期:最終氷期とリス氷期との間の温暖期に波によって削られたところ。12万年の間に100m以上隆起している。


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